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藤田 嗣治の水彩画その2(終) [絵]

藤田嗣治の本を4冊、図書館からネットで探して借りて来て読んだ。
「猫の本 藤田嗣治画文集」(講談社 2003)、エッセイ「腕一本、パリの横顔(講談社文芸文庫)」、「地を泳ぐ」(平凡社2014)、「藤田嗣治画集 素晴らしき乳白色」(講談社2002)である。

猫の本の画文集は、1929年頃パリで出版された版画集「猫十態」と1930年ニューヨークで出版された挿画本「猫の本」をもとに画家のエッセイから抜粋した文を添えたもの。「猫十態」の方は、マカール法と呼ばれたアクアチントなどの混合技法で刷られたという。「猫の本」はモノトーンのドローイングで、いずれも水彩ではないが藤田の猫をたっぷり愉しめる。フジタは猫の家畜性と野獣性が面白いという。

藤田のエッセイには「地を泳ぐ」(1942)など幾つかあるが、「腕一本~」もパリでの苦労や成功談などが面白い。
ただ、今回殊に興味が惹かれたのは、「腕一本〜」のフランス帰化後の晩年の文章、「夢の中に生きる(未発表)」だった。故国への屈折した思いと老いの孤愁を見つめた詩型で日記風の短文である。
少しだけ引用してみたい。
・1966.1.2初夢
日本に生まれて祖国に愛されず、
又フランスに帰化してもフランス人としても待遇を受けず、
共産党のように擁護もなく、
迷路の中に一生を終わる薄命の画家だった。
お寺を作るのは私の命の生根の試しをやって見るつもりだ。
・1967年
病院で歳を越すとは知らざりき。(中略)
父想う度に鏡手に取りて、驚きて見る我が顔を父かと思う老いの今日の月。
今朝の顔百歳位と妻笑ふ昨日も今日も腹下してあれば。

その一番最後はこうある。
・66.9.28
みちづれもなき一人旅
我が思いをのこる妻に残して。

藤田は1968.1.29に亡くなっている。これらが書かれた66、67年の最晩年、異邦人画伯の辛さをしみじみと想う。

講談社の画集は、2002年に発行されたものである。1935年5度目に結婚(画伯49歳のとき)した君代夫人らの手で編まれた。
この種の画集は、油彩画が圧倒的に多く掲載されたものがほとんどだが、藤田の画業に占める水彩が多いせいか水彩画が目立つ。

さて、藤田嗣治の水彩画は、アマチュアから見ても特徴がはっきりしている、線が主体なのは、日本画を意識しているからであろう。油彩も同じだ。二つはほとんど似ている。
下絵や油彩のための水彩でなく、水彩も本制作品が多い。色調も明るい色が少なく、沈んでどちらかと言えば暗い。水彩に墨を使うが、油彩にも墨らしき線、陰があるように見える。油彩には「乳白色」があるところが違いか。何れにしても日本画を洋画に取り入れようとした結果であろう。面相筆を愛用していることが全てを語るというところか。




「恋人たちと鳩 」(水彩 1917)
「バラを持つ女 」(水彩 1918)
「花に水を注ぐ女 」(水彩 1918頃)この三枚は初期の水彩画。
「横綱栃木山の像 」(水彩 1926)
「少女と猫 」(水彩 1929)
「ラバスの老婆 」(墨 淡彩1932)1932メキシコ訪問。古い歴史を持つ藝術国で影響を受けたようだ。
「メキシコの女 」(油彩 1932)油彩と水彩と似ている好例。水彩と言われても疑わないだろう。
「メキシコの母娘 」(墨 水彩 1933)
「メキシコの少年 」(水彩 1933)
「ラマと四人の人物 」(水彩 1933 )
「猫と裸婦 」(墨 水彩 1932)
「婦人像 」(墨 水彩 1932)
「猫の本」(2003講談社)の表紙。


「 Untitled 」(1910前後 水彩)渡仏前の絵。和風の髪型。24歳の時のもの。前回にも1枚掲載した。
モデルは1912年結婚した最初の妻鴇田登美子か。1916年離婚。
「Untitled 猫」
「Untitled 蜂」
「御遠足 」(挿絵水彩 1927) (2枚)
「力士 」(水彩 1934)
「少女と子供 」(墨 水彩 1952)淡く良い青だ。帰化後の水彩画は少なくなる。
「人形を持った少女 」(水彩 1951)帰化後に多くなるのは油彩の子供の絵。この2枚はその意味で珍しいといえる。
「エミリー ・クレイン・シャドボーンの肖像 」(テンペラ 1922)テンペラは、水彩に限りなく近い。アンドリュース・ワイエスが名手といわれる。それを想起させるような良い絵だとおもう。


藤田の戦争画のことは、藤田嗣治という画家を理解するためには重要なのだろうが、作品は「アッツ島玉砕」( 油彩 1943)など油彩画であり、水彩画は無いのかどうか見つからなかった事を口実に今回は触れないことにする。

最後に猫ばっか。



「猫 」(水彩 インク 絹 1926)
「猫十態より 」(マカール法 1929頃)
「猫の本より 」(コロタイプ 1930 )パシファエ(上)とメッサリーナ(下)
「猫十態より」 (マカール法 1929頃)
「魚と三匹の猫」 (油彩 1932)

題名等不詳の猫の絵ーこれも模写。線が一筆書きにならない。さすが線の画家と思い知る。
image.jpg

「猫 」(墨 1949)
「地を泳ぐ」より

蛇足二つ。
・藤田は安房長尾藩家老の家柄に生まれ、父は鴎外の後任の陸軍軍医総監だが、ファミリーツリーを見ると児玉源太郎、小山内 薫、蘆原英了、岡田三郎助、石橋正二郎など著名人が多い。華麗なる一族である。

・日仏合作映画「FOUJITA」( 小栗康平監督 オダギリジョー 中谷美紀主演)が 2014年内に完成、2015年公開予定という。面白そう。

フジタは、エコール・ド・パリ、社交界の寵児、レジオン・ドヌール勲章受章(1957)など栄光の時代を経て、帰朝後の画壇における軋轢、戦争画批判に嫌気をさして、失意のうちに故国を離れフランスに帰化して亡くなるまで81歳の波乱の生涯に多くの作品を描いた。
軽佻だ、いや硬骨漢だと正反対の評価もあるくらいアマチュアには分かりにくい画家ではあるが、猫と女性の絵が魅力的であることは紛れも無い。とりわけカワイイだけでなく、どこかリアルな猫の絵はわが好みである。


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